墓参り

• 投稿日：2014年12月26日

M先生。
私のことをとても気にかけていてくれました。
保母さんでした。夫は東大の教授。
保母の仕事が好きなのよ、と言っていました。
一度だけ、家に招待してもらったことがあります。
手作りのケーキを先生のピアノを聞きながらご馳走になり、
とても心地よい気分で家路につきました。

ところが先生の家を出てまもなく、住宅街の十字路で女子高生を車で
はねてしまったのです。
私の一時停止違反でした。幸い大事に至らず、ひとまず帰宅しました。
翌朝、心配しながら様子伺いに女子高生の家を訪ねました。
玄関に女子高生と母親が出てきてくれました。女子高生は普通の感じでした。
母親は、「念のため昨夜受診しましたが大丈夫とのことでした」と言った後、
家の奥に向かって「ＯＯちゃん」と呼びかけたのです。

私はてっきり学校に行く準備をしている息子さんに声をかけたのだと思いました。
ところが、程なく現われたのはご主人でした。
そして開口一番の言葉が、「あそこはよく事故のあるところで娘には日ごろから注意していました」でした。そしてその後も私を責める言葉は、一言も無いのです。

女子高生は無事、そして温かいご家族の応対。
M先生が守ってくれた。そう思いました。
もう２０年以上前のことです。先生は今、郷里の山口県の
風景に似ているという秩父の聖地苑に眠っています。
毎年、二回ほど墓掃除に行くのが、私のせめてもの恩返しです。

 

• 投稿者：サニーホーム